ユーザ事例

Hendrick Motorsports、PLMで事業を加速、導入から生産開始まで、業界最速の5ヵ月間を達成

Hendrick Motorsports (HMS)

競合の多くがCAD/CAMを採用している昨今、HMS社には技術面での優位性を獲得するために新たな手段が必要でした。

新たな優位性を求めて

1984年に設立されたHMS社は、一般に考えられているレース・チームとは大きく違っています。NASCARネクステル・カップ・シリーズに4チーム、NASCARブッシュ・シリーズに2チームを参戦させているだけでなく、年間750台ものエンジンも製造し、自らのチームで使用するとともに、一部を他のチームにも貸与しています。しかし、その活躍の広さだけがHMS社の独自性ではありません。現在までの勝利数は140回を超え、しかもネクステル・カップ・チャンピオンシップでは4シーズン連続制覇という無類の実績を誇っています。

エンジン部門のチーフ・エンジニアであるJim Wall氏は、1990年代半ばに導入した I-deas™ソフトウェアがこの成功の一端を担っていると語っています。I-deasテクノロジーを通じ、エンジンの製造時間の短縮とマシニングにおける無類の整合性、そして製造コストの削減をも同時に達成することができ、そうした改善がレース・トラックにおいても華々しい成果をもたらしているのです。このソフトウェア技術を利用した最初のエンジンは、Purolator 500レースで1位から3位までを独占。HMS社はその後、NX™ソフトウェアの活用範囲をマシンの全部品に拡大しました。しかし、時の流れとともに他のNASCARチームも次々とCAD/CAMの採用に踏み切ったことから、HMS社は技術上の優位性を守るため、シーメンスPLMソフトウェアのテクノロジーを活用する別の方法を追求し始めました。 

要求される情報管理

技術競争に勝つためにHMS社が立てた計画の1つは、マシン情報へのアクセス性の向上であり、広大な本社の敷地のどこからでも、また各チームが臨戦する各地のサーキットからでもデータへのアクセスを可能にすることでした。マシン情報を必要とするスタッフには、チームのクルー・チーフやエンジニア、マーケティングやライセンシング担当者、シャーシ部門やエンジン部門のメンバー、その他多数の関係者が含まれており、その数は500名を超えるHMS社員の4分の3以上にも及びます。一方、情報量も厖大で、データは70エーカー(約283,000平方メートル)の敷地内にある9棟の建物に設置された19のサーバに分散格納されており、求める情報を探し当てるのに何時間も費やす場合もあるほどです。CADモデル、CAMプログラム、デジタル・シミュレーションの結果、エンジン性能の試験データ、シャーシ性能の試験データ、風洞データ、トラック・テストの結果、マーケティング/ライセンシング資料など、勝つためのエンジンとマシン開発に伴う情報のすべてが、この巨大なデータ置き場に収められているのです。

「何らかの手段でこの情報全体を管理しなければ、時間を浪費するだけでなく、古いデータを入手してしまう危険性さえあります。レース・トラックで遭遇する問題は3日以内に解決しなければならない性質のもので、その場合、数時間をデータ検索に費やすことは不利な条件となるのです」と、HMS社のアプリケーション・マネージャー、Jim McKenzie氏は説明しています。

PLMの大規模な実装を記録的なペースで達成

スピードこそが最重要視されているこの業界では、情報管理の問題解決にも型破りの迅速さが要求されるのは当然であり、HMS社は、Teamcenterを社内のPLM(製品ライフサイクル管理)のデジタル・バックボーンとして採用し、シーメンスPLMソフトウェアのコンサルティング・チームの支援を受けながら、5ヵ月後の本格的な生産を目指して新しいプロジェクトに着手しました。

わずか5ヵ月の実装完了はPLM業界の最短記録であると同時に、レース史上に残る快挙でもあります。Wall氏の知る限り、NASCARチームとしてこのテクノロジーを採用した組織はHMS社が最初であり、導入が完了して製品関連の全データがTeamcenter®に読み込まれた後は、「検索メニューに数語を入力するだけの時間と手間」で目的のデータを探し出せるようになったと、同氏は語っています。「現場で情報を即座に取り出し、適切な意思決定を行うことで、より高速なマシンをコース上に送り出せるようになりました。」

Teamcenterがもたらした情報アクセスの向上は、HMS社や他のNASCARチームが直面している多くの重要課題への取り組みに役立っています。そうした課題の1例が、新規の車体とエンジンの開発段階で得られる大量のテスト・データや性能データの管理です。個々のテスト・データはそれ自体が実用的であり、Teamcenterは、これまで待望されていた特定のデータの素早い検索機能を提供します。しかしそれだけではなく、組み立て状態やテスト状態のさまざまな製品構成(レース・カーおよびエンジンの構成)にシリアル番号を付して整理し、その構成情報とテスト・データを比較検討してこそ、テスト・データは真価を発揮します。HMS社はTeamcenterを通じてこうした重要なデータのリンクを実現しました。「Teamcenterに搭載されている組み立て時の製品構造のシリアライゼーション機能により、テスト・データと特定の車体構成、エンジン構成とを相関させることができます。性能と構成のこの関連付けがTeamcenterでは瞬時に行えるため、いかなるレース状況でも最良のマシン構成を短時間で決定することができます」と、Wall氏は説明しています。

Teamcenterと無線通信との組み合わせにより、チームはレース・トラックに入った後でもマシン構成の最適化を保てるようになりました。エンジニアはトラック上で無線機能付きのノートPCを使ってTeamcenterのデータベースにクエリを実行。ノートPCからのクエリ情報はチームが現地に設置したサテライト・リンクに送られ、衛星を介して本社のTeamcenterに伝えられ、要求した情報が折り返しサーキットへと送信されます。この方法により、HMS社のマシンには個々のレース・シーンに合わせ、以前は考えられなかったきめ細かな調整が施されるようになりました。

多様な構成の管理

Teamcenterのもうひとつ重要な役割として、増え続ける製品構成の処理があります。HMS社は、NASCARレース・サーキットにおける需要に応えてさまざまな製品構成を生み出さなければなりません。Wall氏によれば、「開催地が変わるたびに、私たちは初めてのトラックで勝利するため、新しいマシン構成を考案しています」と言います。Teamcenterを利用して新規のマシン構成を作成する場合は、まず汎用的な車体とエンジンを土台とし、レース戦況における特有な要件を加味しつつ変更を加えていくことで、作業時間を短縮させることができます。「Teamcenterは製品構成をパラメータ化し、私たちはそれを使って、あらゆる想定可能な構成を必要に応じて作成します。構成の変更が臨機応変に行えるため、スピードが要求されるレースの世界には最適です。」

Teamcenterが決定的な効果を表すのは、問題報告のプロセスです。レース・チームでは、部品や材料、設計などに不具合が発見された場合、その情報を記録し、他の車体でも何らかのトラブルが生じる恐れがないかを見極める手段が必要です。「惨事を招く前に、迅速に傾向を見つけ出すことが重要です。」 HMS社では不具合の情報を組み立て時の製品構成にリンクさせるTeamcenterの機能を利用して、同じ不具合がトラブルを生じない場所を即座に特定することができます。さらに、Teamcenterのベンダー管理機能はベンダーのサービスや技能のデータを管理して、リスクの一層低減に役立っています。

ライフサイクル全体を強力に支援

従来、製品データ管理(PDM)システムは設計領域のデータ管理のみを目的としていました。HMS社のPLMソリューションであるTeamcenterはその枠を超え、製品ライフサイクルのフロントエンド、バックエンドの両面で、より多様な情報を管理します。フロントエンドでは、例えば、NASCARが定める新ルールなどの要件データを取り込むことで、最終的には要件駆動型設計プロセスの実現につながります。またバックエンドでは、他に類のない、シリアル番号を付与した組み立て時の構成データを取り込みという、レース・チームであると同時に、製造業者でもあるHMS社にとって不可欠の機能を提供します。「私たちの施設は、いわば車の再製造工場で、組み合わせるすべてのアセンブリを保守管理する必要があります。製品構成を組み立てる時点でシリアル番号を一括管理することで、私たちが走らせるマシン、他のチームにリースするエンジンの両方を、製品ライフサイクル全体を通じてより適切にコントロールすることができます」と、Wall氏は語っています。

Teamcenterはまた、HMS社のような大規模な組織に必要なアクセス上のセキュリティ・レベルを保証しているため、いくつものレース・チームやサプライヤー間でデータを安全に共有することができます。「誰がどの情報を閲覧できるかは注意が必要です。Teamcenterのセキュリティ・モデルでは、エリアごとの秘密保持が可能な上、適切なデータを共有したコラボレーションが行えます」と、Wall氏は説明します。

コラボレーションの将来性

HMS社の将来の目標の1つにコラボレーションのさらなる推進があり、その手段として、NXの使用を組織全体に拡大することを計画しています。ネクステル・カップに参戦する4チームのそれぞれがエンジニアリング・チームを持っており、シャーシとエンジンの各部門で相当数のスタッフが働いていますが、現在はその全員が、共通のデータベース上にある3D設計データを利用しています。構想の一部として、1)他のデータ・タイプ(レース・データ、テスト・データなど)との連携、2)エンジニアリング以外のグループにもこれらのデータのビジュアル化して活用する、3)クルー・チーフやチーム・メンバーがどこからでも全データにアクセスできるアクセス・モデルの強化、といった機能の拡張が考えられています。

また、CADシステムのデータを1つのモデルに統合するため、Teamcenterのビジュアライゼーション機能を活用することも検討されています。現時点では、HMS社の内部で使用されているフォーマットとは異なるCADデータをサプライヤーなどから受け取った場合は、より大きいアセンブリに組み込んだ状態を想定した設計検証は困難ですが、Teamcenterは各種のCADデータをJT™ データ フォーマットに介してニュートラルに表現できるため、さまざまなCAD設計構造を編集、解析、検証することが可能になります。JTフォーマットへの対応により、CADユーザーでなくてもデータを3D表現として見ることができ、より充実したコラボレーションが行えるようになります。

さらにワークフローの管理にもTeamcenterを活用すれば、レース・ルールの変更への対応プロセスも大幅に迅速化できるはずだとHMS社は考えています。「新しい部品の設計、組み立て、テストまでを1週間以内に完了させて次のレースに間に合わせなければならないこともあります。エンジニアリング・レビューのサイクルをTeamcenterで管理すれば、作業時間を半日以上節約できるでしょう」と、McKenzie氏は述べています。Teamcenterが実現する優れた情報アクセスとコラボレーション、そしてNXの高度な設計製造ソリューションに支えられ、HMS社はNASCARのライバルたちとの戦いで再びリードを拡げようとしています。

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