革新的でコラボラティブ、かつ連携した新規プログラムの管理
トランスファーマシン、専用機などの工作機械の設計・製造・販売
コマツNTCは、トランスファーマシン、専用機、研削盤、マシニングセンター、クランクシャフト加工機、ワイヤソーなどを設計、製造、販売している工作機械メーカーです。コマツグループの一員として、「品質第一主義」と「顧客満足度向上」をモットーに世界最高水準の製品を提供し、地球環境にやさしいものづくりを推進しています。
開発本部 システム開発センタ 所長 親部 快晴氏は次のように語ります。「機械構成におけるソフトウェアの重要性が高まり、開発プロセスが複雑化している中、お客様からの納期やコスト面での要求はますます厳しくなっています。しかし、電気・ソフトウェアなどの制御設計の領域は、機械設計後にできあがる図面等の必要な情報を受け取ってからスタートせざるを得ず、これが短納期化やコスト削減を阻害する要因になっていました。」
また、これまで機械設計チームと制御設計チームの間では、開発ステップごとに行われる会議において情報交換が行われてきました。多忙を極めると、チーム間での擦り合わせの機会を設けることも難しくなり、結果、仕様変更の連絡漏れや伝達ミスが生じた状態で各チームの詳細設計が進んでしまうこともありました。時には、設計プロセスの終盤になってから機械・電気部品の間で干渉が発覚したり、要求どおりに機械が作動しないことが判明したりするケースもあったのです。
さらに、制御設計プロセスの半ばで機械設計チームが試作機を作ってしまい、制御設計チームがその技術要件に合わせた制御プログラムの修正を余儀なくされることもありました。こうした手戻りを防ぐためには、設計プロセスの早い段階から制御対象を3Dモデル化し、開発ステップごとに電気設計や制御プログラムの妥当性を検証できるツールが必要でした。
開発本部 システム開発センタ 制御開発部 浅谷 剛史氏はこう話します。「インダストリー4.0 に基づく次世代のものづくりを目指す中で、その構成要素の1つであるリアルとバーチャルの融合は大きなテーマでした。実機を仮想的に再現した環境で、効率的な制御ソフトウェア開発を行うバーチャル・コミッショニングを実現したいと考えたのです。」
コマツNTCは、2015年、バーチャル・コミッショニングを実現するツールの選定を開始し、いくつかのツールを複数の評価項目で比較・検討しました。結果、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのNX™とそのオプション・モジュールであるMechatronics Concept Designerを制御設計の領域に導入することを決めました。機械設計の領域では、他社の3次元CAD (コンピュータ支援設計) ソフトウェアを利用しており、既存のCADソフトウェアの設計資産をシームレスに交換・再利用できることが重要な要件の1つでした。
浅 谷 氏 は 次 のように述 べています。「Mechatronics Concept Designerを利用すれば、コンセプト設計の段階から機械設計と制御設計に一貫性を持たせた開発ステップを踏むことができます。HILに必要な各種機能を搭載し、完全なバーチャル・コミッショニングを実現できる唯一のツールがMechatronicsConcept Designerでした。重力や摩擦の値を変えて演算処理を行い、落下や衝突、反発などの動きをシミュレーションできること、我々が採用するシーメンスのCNCコントローラとの親和性もポイントでした。」
同社は、約半年の開発期間を経てNXとMechatronics Concept Designerを利用できる環境を整えました。稼働後、制御設計チームは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのサポートを得ながら基礎教育や応用教育を実施しまし た 。N XとMechatronics Concept Designerは、直感的に操作できるため、導入もスムーズでした。
コマツNTCは、NXとMechatronics Concept Designerを活用して機械設計チームと制御設計チーム間の情報共有を加速し、開発プロセスを効率化しています。たとえば、制御設計チームはMechatronics Concept Designerを活用し、要求事項にしたがって機械部品の形状や寸法を変更できます。その変更箇所も機械設計チームと即座に共有できるため、各チームが最新の設計情報を参照しながら整合性のとれた 開発ステップを踏むことが可能になります。
さらに、設計の早い段階で制御対象を 3Dモデル化できるIT環境によって、開発ステップごとに速やかに電気設計や制御プログラムの妥当性を検証できるので す。Mechatronics Concept Designerを採用したことで、HILを適用したバーチャル・コミッショニングも実現しました。実際、同社は実機を仮想的に再現した環境で制御プログラムの実行・テストを行い、不具合やエラーが発生する条件を把握したり、デバッグ作業を行ったりしています。
浅谷氏は続けます。「Mechatronics Concept Designer導入以前、従来の実機を用いたテストでは、設計ミスに起因する部品間の干渉や誤作動によって試作機を壊してしまうケースもありました。Mechatronics Concept Designerでは、断面図を用いたシミュレーションにより物理的に目視できない箇所の動きも確認できます。これにより、テスト・デバッグ作業が効率化し、テスト人員の 安 全も担 保できるようになりました。」
コマツNT Cは今 後、Mechatronics Concept DesignerとCAE (コンピュータ支援エンジニアリング) を連携することで、機械の動作から部品の劣化や摩耗を測り、機械の寿命評価を行う仕組みを立ち上げるとともに、納品後の機械に異常が発生した際の遠隔サポートにもMechatronics Concept Designerを活用する計画です。具体的には、異常発生前後のNC (数値制御)・ PLC (プログラマブル・ロジック・コントローラー)デ ータをMechatronics Concept Designer上で再現することで現場を訪問する前に異常の真因を特定し、早期解決できる体制を目指します。
親部氏は、「シーメンスは、アプリケーションからインフラまで、すべてのレイヤーに渡るソリューションをトータルで提供できる限られた業界プレイヤーです。シーメンスの統合ソリューションを活用しながら次世代のものづくりを推進し、アジアだけでなく、欧州への展開にも積極的に打ってでたいと考えています。」と話しています。