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ユーザー事例

シミュレーションを活用してシザーリフトの性能を改善し、ICEから電動モーターへと移行

ハウロッテ、Simcenterを使用して、シザーリフトPulseoの最大揚高を25%、積載荷重を50%改善

Leveraging simulation to help improve scissor-lift performance while transitioning from an ICE to an electric motor

Haulotte

ハウロッテ・グループは、フランスの高所作業車の大手メーカーであり、この製品分野で世界第3位の規模を誇ります。

https://www.pulseo-generation.com/us/
本社:
Lorette, France
製品:
NX, NX Open, Simcenter 3D Software, Simcenter Products, Simcenter Amesim
業種:
重機

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Simcenterを使用してシザーリフトの全体的な性能を改善し、23kWの熱機関から12kWの電動モーターへと移行しました。
Arnaud Chaigne, シミュレーションおよびデジタル検証部門の責任者
Haulotte

安全が最優先

建設現場を見てみると、さまざまな作業に多数のシザーリフトが使用されていることがわかります。昇降プラットフォームを備えたこのタイプの建設用リフトは、屋内の塗装作業から屋外の改修まで、困難な状況下で性能を発揮しなければなりません。

屋外作業は、このタイプの機器にとっては難しい場合があります。地面がぬかるんで不均一だと、操縦するのも困難です。ぬかるんだ急な斜面で作業を完遂するには、高い牽引性能が必要です。

もう1つの鍵は、騒音と排出の規制です。リフトは排気ガスを出さないものもありますが、騒音に関しては、特に屋内ではオペレーターや乗組員の安全を守るために、デシベルレベルに制限があります。つまり、機関とアクチュエーター・システムが生成する騒音を抑制するだけでなく、内燃機関(ICE)に適用される厳しい基準を満たさなければなりません。多くの都市部が「低排出ゾーン」を導入するにつれ、メーカーはイノベーションを加速して、代替エネルギー機器を生産することを余儀なくされています。多くの場合、「電気」が最も現実的な選択肢でしょう。

最後に、建設機械やリフト全般では安全性が最も重要です。こうした機械の目的は、地上から離れた高所で作業することです。つまり、メーカーとエンドユーザーの両者にとって「安定性」が最優先事項であることを意味します。

自宅のガレージにシザーリフトを所有している人を知っていますか?

そんな人はあまりいないでしょう。建設業で使用される他の機器と同様に、シザーリフトの最終顧客の80%は機器レンタル会社です。エンドユーザーではありません。レンタル会社は、幅広い用途の高性能機械を顧客に提供する必要があります。顧客は、同一の現場に、異なる機械を何台もレンタルしたくはありません。つまり、レンタルフリートを管理する側から見ると、汎用性に優れた最高性能の機械を提供できることが最大の強みとなります。

Pulseoシリーズを投入

こうした市場のギャップを埋めるために、フランスのロレットに拠点を置く世界有数のリフト装置メーカー/サプライヤーであるハウロッテは、次世代の電動全地形シザーリフト・シリーズ、Pulseoを開発しました。全電動式のPulseoプラットフォームは、屋内と屋外のどちらの作業にも適しており、以前の内燃機関モデルよりも遥かに優れた性能を発揮します。

ハウロッテのシミュレーション/デジタル検証部門の責任者であるArnaud Chaigne氏とチームは、こうした新モデルを開発する際に、シミュレーションを使用して設計の可能性を探求し、機械の性能を予測しています。

「シミュレーションを使用して、さまざまなシステム(油圧、電気、制御など)への影響や、機械の安定性、オペレーターの安全性などを考慮し、多様なイノベーション・シナリオで実現可能性を評価できました。」とChaigne氏は述べています。

Design architecture evaluation using Simcenter Amesim.

Design architecture evaluation using Simcenter Amesim.

最適なシミュレーション・ツール

ハウロッテは、システム/機械シミュレーションにSimcenter™ソフトウェア・ツールを使用しています。Simcenterは、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアが提供する包括的な統合型ソフトウェア/サービス・ポートフォリオ、Xceleratorに含まれています。ハウロッテのエンジニアは、これらのシミュレーション・ツールを使用して、市場の要求に応える製品ライン、12kW電動モーター・シザーリフトを開発しました。この新しい電動シザーリフトは、23kWの内燃機関(ICE)を搭載した以前のモデルと比較して、より優れた性能を発揮します。無騒音、無公害であるだけでなく、全体の性能も高くなっています。最大揚高は12mから15mへ、積載荷重は500kgから750kgへと向上しています。

Chaigne氏は、未来の全地形シザーリフト、Pulseoのアーキテクチャを最適化するために、Simcenter Amesim™ソフトウェアを使用してシステム・シミュレーションを行いました。この作業で最も難しかったのが、電動モーターの性能最適化でした。従来のICEとは異なり、電動モーターから必要なパワーを得るには、多くの設計問題や制約に対処する必要がありました。

最初に、あらゆるレベル(油圧分配を含む、機関から全体構造まで)のエネルギー損失を特定しました。

「私たちは、最もエネルギーを消費する部品を特定するために、既存の熱システムをモデル化することから始めました(エネルギー損失マッピング)。これにより、あらゆるエネルギー消費が重要である全電気式機械に適した新たなアーキテクチャを定義することができました。」Chaigne氏は、このように述べています。

最適なシステム・アーキテクチャを定義

最適なアーキテクチャを定義するプロジェクトの一環として、チームは電気システムのバッテリーのサイジングに取り組みました。

Chaigne氏は次のように説明しています。「バッテリーのサイズを正しく設定するには、2つの領域を調査する必要がありました。1つは日常のオペレーションに必要なエネルギーの総量、もう1つは過渡時の高電力需要です。こうした電力ピークに適応しようとすると、「過剰設計になる」リスクがあります。このため、制御法則をモデル化してピークを抑制しました。」

Chaigne氏とチームは解析で、アクチュエーターが起動したときの上昇の冒頭でピークが発生したことを観測しました。

「バッテリーのサイズを最適化するために、リフト時間を維持しながら、電力ピークをなだらかにする制御法則を開発する必要がありました。その結果、上昇全体を通して電力レベルが一定になりました。」とChaigne氏は言います。

Customized process-oriented workflow tool using NX™ Open software, in Simcenter 3D.

Customized process-oriented workflow tool using NX™ Open software, in Simcenter 3D.

Simulation of in-operation machine  stability, using Simcenter 3D Motion.

Simulation of in-operation machine stability, using Simcenter 3D Motion.

Simcenter 3D Motionを使って安定性を実現

各国の規制は、「昇降リフトが現場に移動しているときにも、プラットフォームにオペレーターや作業者が乗って昇降リフトが静止しているときにも、昇降リフトの安定性が保たれていなければならない」と規定しています。

Chaigne氏は次のように述べています。「新しいシザーリフトの生産性を向上させるには、輸送中の安定性を調査する必要があり、機械が動いて展開しているときの車両全体の安定性を保つには、振動する車軸の挙動を調査する必要があります。」

Chaigne氏とチームは、考え得るすべてのシナリオを予測できるように、Simcenter 3D Motionソフトウェアを使用してシザーリフトの動的挙動を調査しました。

「Simcenterの動的マルチボディ・シミュレーションを使用して、安定性を保てるようなシザーリフトのサイズを特定しました。これにより、性能と重量の間の最良の妥協点を見つけ、開発時間を短縮できました。」とChaigne氏は言います。

Outdoor work in progress with the Pulseo.

Outdoor work in progress with the Pulseo.

専門家以外の人もシミュレーションを行えるように

Chaigne氏は次のように言います。「シミュレーションの専門家として私には、皆がシミュレーション・ツールを使えるようにする責任があります。NX Openを介してSimcenter 3Dでカスタマイズが可能なため、当社の事業ルールと公的規制を統合して計算プロセスを高速化し、エラーのリスクを軽減できました。」

ハウロッテの設計事務所では、さまざまな安定性解析を実行していますが、そのプロセスは標準的な基準に基づいて進みます。問題は、この基準が地域ごとに異なり、要件が広範な変動要因を含むことでした。風力などの環境要因から、オペレーターによる衝撃や機器の取り扱い(負荷位置や作業角度)など、人為的な要因まであります。

「標準パラメーターを管理することと並行して、当社の設計事務所で作成したモデルの予測可能性を可能な限り高めようとしています。これは、タイヤの挙動や実際の剛性、重量分布など、安定性に影響を与えるパラメーターを考慮することを意味します。モデルを定義したら、さまざまな標準構成で安定性を確認する必要があります。このステップが比較的長く、面倒です。」とChaigne氏は説明します。

時間を節約し、面倒な作業を排除

時間を節約し、安定性計算の解析プロセスを改善するために、チームはSimcenter 3Dのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)自動化モジュールであるNX™Openソフトウェアを使用して、プロセス指向のカスタム・ワークフロー・ツールを開発しました。

Chaigne氏は次のように説明します。「具体的には、NX Openを使用すると、さまざまな基準を考慮してデータ入力を自動化できます。後処理中には、明確な安定性情報が提供されます。このため、専門家以外の人でも、複雑なSimcenter 3D Motionモデルを扱えます。」

練成シミュレーションで性能を改善

電動Pulseoシリーズの開発では、エンジニアリング・チームは、構造/安定性解析に使用するSimcenter 3Dモデルと、エネルギー解析/バッテリー・サイジングに使用するSimcenter Amesimシステム・シミュレーション・モデルを練成シミュレーションします。

「電動機の場合、エネルギー消費は非常に重要です。Simcenter 3D Motionを使用すると、運動学特性や質量分布、摩擦、動的影響を考慮して、油圧アクチュエーターの力をモデル化できます。アクチュエーターに必要な圧力レベルの詳細とエネルギーについての真の知見を得ることができます。」とChaigne氏は言います。

チームは、2種類の練成シミュレーション・プロセスを使用しています。

「最初のケースでは、2つのソフトウェア・プログラムを同時に実行し、情報を交換して共通のソリューションへと収束させます。2つめのケースでは、Simcenter 3D Motionを使用して、シリンダー位置に基づいて力のテーブルを生成し、この情報をSimcenter Amesimで使用します。」

シザーリフトは複数のアクチュエーターを使用して油圧で作動するため、構造全体の応力分布は油圧アクチュエーターの圧力バランスによって変わります。Chaigne氏は次のように述べています。「連成シミュレーションを行うことで、通常条件下と故障時(ホースの破裂など)の応力を解析することができます。油圧シリンダーの圧力への影響や、荷重の伝達を確認できます。」

シミュレーションを使用して物理テストを削減

「計算とシミュレーションは、最初のプロトタイプを製造する前に、設計が特定の成熟度レベルに到達しているかどうかを確認するための理論的検証プロセスの一部です。それでも、テスト段階は不可欠です。シミュレーションは、安定性の観点から最も重要なケースを特定し、機械の位置、荷重、力などのパラメーターを評価するのに役立ちます。」とChaigne氏は言います。

特定された重大なケースは、テスト評価で検証されます。

「テスト結果がシミュレーションと一致しているかどうかを確認します。モデルを改善するには、このシミュレーション - テストの解析ループが必要です。シミュレーション・モデルを使用すると、プロトタイプを削減できるため、テストに費やす時間が短縮します。」とChaigne氏は述べています。

シミュレーションを使用して性能、挙動を理解

Chaigne氏は次のように説明しています。「シミュレーションは、システム・アーキテクチャ全体を定義するのに役立ちますが、テスト中に発生した問題のトラブル・シューティングなど、さまざまな開発段階で使用されます。シミュレーションを行うことで、望ましくない性能や挙動、その原因についての深い知見が得られます。」「性能を正確に再現するには、さまざまな物理現象をモデル化する必要があります。これには、影響を及ぼすパラメーターを特定し、代替案を即時に評価する作業が含まれます。こうして、成熟度の高い決定的なアーキテクチャでプロトタイピング段階に到達することができます。」

設計事務所内では、シミュレーション解析チームをプロトタイプ・テストチームから分離させないことが重要だとChaigne氏は言います。シミュレーション - テストのループをコラボレーション可能なプロセスに統合し、テスト中に検出した問題を、シミュレーションを使用してできるだけ速く解決できるようにする必要があります。

Indoor work in progress with the Pulseo.

Indoor work in progress with the Pulseo.

優れた性能と最高の安全性

Simcenterシミュレーション・ツールの使用は、ハウロッテの新しい電動全地形シザーリフト、Pulseoの設計・開発の最大の成功要因でした。チームは、オペレーションの安定性、安全基準、騒音放射や大気汚染に関するさまざまな要件をすべて満たすことができました。Simcenterのシミュレーション機能のおかげで、以前のICEモデルよりも優れた性能を発揮する、最適な設計を作成できました。

「Simcenterを使用してシザーリフトの全体的な性能を改善し、23kWの熱機関から12kWの電動モーターへと移行しました。最大揚高は12mから15mへと25%上昇し、積載荷重は500kgから750kgへと50%増加しました。」Chaigne氏はこのように結論付けています。

Simcenter 3D Motionを使用すると、運動学特性や質量分布、摩擦、動的影響を考慮して、油圧アクチュエーターの力をモデル化できます。アクチュエーターに必要な圧力レベルの詳細とエネルギーについての真の知見を得ることができます。
Arnaud Chaigne, シミュレーションおよびデジタル検証部門の責任者
Haulotte