コマツNTCは、 2015年、バーチャル・コミッ ショニングを実現するツールの選定を開始 し、いくつかのツールを複数の評価項目で比 較・検討しました。結果、シーメンスPLMソフト ウェアのNX™とそのオプション・モジュールで あるMechatronics Concept Designerが制御 設計の領域で導入されました。機械設計の領 域では、他社の3次元CAD( コンピュータ支援 設計 )ソフトウェアを利用しており、既存の CADソフトウェアの設計資産をシームレスに 交換・再利用できることが重要な要件の1つで した。
浅谷氏は、「 Mechatronics Concept Designer を利用すれば、コンセプト設計の段階から機 械設計と制御設計に一貫性を持たせた開発 ステップを踏むことができます。 HILに必要な 各種機能を搭載し、完全なバーチャル・コミッ ショニングを実現できる唯一のツールが Mechatronics Concept Designer でした。重力 や摩擦の値を変えて演算処理を行い、落下や 衝突、反発などの動きをシミュレーションでき ること、われわれが採用するシーメンスのCNC コントローラとの親和性もポイントでした」と 述べています。
同 社 は、約 半 年 の 開 発 期 間を経て N Xと Mechatronics Concept Designerを利用でき る環境を整えました。稼働後、制御設計チーム は、シーメンスPLMソフトウェアのサポートを 得ながら基礎教育や応用教育を実施しまし た。 NXとMechatronics Concept Designerは、 直感的に操作できるため、スムーズな導入が 可能になりました。
コマツNTCは、 NXとMechatronics Concept Designerを活用して機械設計と制御設計チー ム間の情報共有を加速し、開発プロセスを効 率化しています。たとえば、制御設計チームは Mechatronics Concept Designerを活用し、要 求事項にしたがって機械部品の形状や寸法 を変更できます。その変更箇所も機械設計 チームと即座に共有できるため、各チームが 最新の設計情報を参照しながら整合性のとれ た開発ステップを踏むことが可能になります。
さらに、設計の早い段階で制御対象を3Dモデ ル化できるIT環境によって、すぐにエンジニア は、開発ステップごとに電気設計や制御プロ グ ラム の 妥 当 性 を 検 証 で きる の で す。 Mechatronics Concept DesignerによりHILを 適用したバーチャル・コミッショニングも実現 しました。実際、同社は実機を仮想的に再現し た環境で制御プログラムの実行・テストを行 い、不具合やエラーが発生する条件を把握し たり、デバッグ作業を行ったりしています。
浅谷氏は、「 Mechatronics Concept Designer 導入前の、従来の実機を用いたテストでは、 設計ミスに起因する部品間の干渉や誤作動 によって試作機を壊してしまうケースもありま した。 Mechatronics Concept Designerでは、 断面図を用いたシミュレーションにより物理 的に目視できない箇所の動きも確認できま す。これにより、テスト・デバッグ作業が効率化 し、テスト人員の安全も担保できるようになり ました」と話します。
コマツNTCは今後、 Mechatronics Concept DesignerとCAE (コンピュータ支援エンジニア リング)を連携することで、機械の動作から部 品の劣化や摩耗を測り、機械の寿命評価を行 う仕組みを立ち上げるとともに、納品後の機 械に異常が発生した際の遠隔サポートにも Mechatronics Concept Designerを活用する 計画です。具体的には、異常発生前後のNC (数値制御)・PLC (プログラマブル・ロジック・ コントローラー)データをMechatronics Concept Designer上で再現することで現場を 訪問する前に異常の真因を特定し、早期解決 できる体制を目指します。
親部氏は、「シーメンスは、アプリケーションか らインフラまで、すべてのレイヤーに渡るソ リューションをトータルで提供できる限られた 業界プレイヤーです。シーメンスの統合ソ リューションを活用しながら次世代のものづく りを推進し、アジアだけでなく、欧州への展開 にも積極的に打ってでたいと考えています」と話しています。