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日野自動車株式会社

海外生産立ち上げスケジュールを短縮、そして設計品質をシーメンスPLMソフトウェアのソリューションで向上

日野自動車株式会社

海外生産立ち上げスケジュールを短縮、そして設計品質をシーメンスPLMソフトウェアのソリューションで向上

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quotation marks "最終的には営業部門が仕様を入力すると、こういう車で、これくらいの金額で出来て、それが生産ラインに渡って製造される、といった同社のプロダクトライサイクル全般にわたって活用されるシステムへの発展を目指しています。" 宮下 敏明 氏, 日野自動車株式会社 CAD・CAE技術部 CAD統括室 室長
quotation marks "ソフトウェア、システムの改善もありますが、仕事のやり方を工夫することの両面で改善をしている。仕事のやり方の改善により相乗効果を生んでいる。" 宮下 敏明 氏, 日野自動車株式会社 CAD・CAE技術部 CAD統括室 室長
quotation marks "最終的には営業部門が仕様を入力すると、こういう車で、これくらいの金額で出来て、それが生産ラインに渡って製造される、といった同社のプロダクトライサイクル全般にわたって活用されるシステムへの発展を目指しています。" 宮下 敏明 氏, 日野自動車株式会社 CAD・CAE技術部 CAD統括室 室長

設計データを一元管理

日野自動車株式会社はトラックを中心に開発・製造している会社です。1991年にハイブリッド型バスを発売し、世界で初めてハイブリッド車を世に送り出した会社でもあります。同社製品の販売は世界80の国と地域に及び、製造は海外75%、日本国内25%と、グローバルにビジネスを展開しています。 同社では2005年に3DCAD を導入しました。車両開発のCATIA® 、エンジン開発のCreo®と両部門で異なるCADを導入し、CADデータの管理も一方はOS上のフォルダーで管理、もう一方はCAD付随のデータ管理ツールというように異なっていました。PDMについてはトラック特有の開発プロセス、データ管理の要求を満たすシステムの検討が続けられ、2012年にシーメンスPLMソフトウェアのTeamcenter®を導入しました。それまでバラバラに管理されていた設計データをTeamcenterで一元管理する体制に移行し、最新のデータを「いつでも、誰でも」アクセスできる環境を実現しました。その結果、開発時間の短縮、設計品質向上などの効果を生んでいます。現在までにTeamcenterを約700ライセンス導入し、今後は海外拠点へも展開していく計画です。

トラック特有の開発プロセス

トラックは同じ車種でも、例えば燃料タンクの取り付け位置が異なることなどから、多数のバリエーションが存在します。同社が開発、生産するトラックはバリエーションが1000種類にも達します。開発はバッテリーや燃料タンクなどの装置類の設計者と、それらを様々なバリエーションに合わせて配置するレイアウトの設計者が協業して進められます。 このような開発プロセスでは、設計変更時の影響範囲が大きくなります。同じトラックでも燃料タンクの位置が異なると、周りの関連する部分も一緒に変更をしなければならず、変更が同時に100車型や200車型に適用されます。このため装置類の形状だけでなく、配置情報も管理しなければなりません。 トラックの場合、最初にある国で立ち上げた後、次はこの国、また次は別の国と五月雨式に開発がスタートします。各国仕様のトラックの開発が終了する前に、別の仕様の開発がスタートするといったように各国仕様の開発プロジェクトが並行して進行し、各プロジェクト間での部品の流用も頻繁に行われています。 「今、開発している部品を別のプロジェクトで流用するわけですが、その部品の設計が変更されると、変更を次にも伝えていかなければなりません。大型車で使っている部品を中型車でも使いたいというケースもあり、流用が様々な場面に及びます。このような流用を可能にするためには、データの管理をきちんと行わなければ追いつきません。」とCAD・CAE技術部CAD統括室室長の宮下敏明氏は話します。 このように多様なバリエーション、チーム設計、プロジェクトの同時進行、部品の流用といったトラック開発特有の開発プロセスにとって、一貫性を持ったデータ管理は必須の課題です。

最新データ収集の難しさ

Teamcenter導入前に設計者にアンケート調査をしたところ、「現状に困っている」という声は73%に上りました。その中でも「最新の正しいデータが入手できない」、「データの共有ができない」、「周辺部品のデータ収集が困難」と言った声が多く聞かれました。 「このように設計者が困っていることの解決を目的としてTeamcenterを導入しました。」と、宮下氏は話します。 Teamcenter導入以前は、設計者は最新データを手作業で集めていました。導入にあたっては、最新の正しいデータにいつでも誰でもアクセスできる環境を構築し、200車型で換算すると15%の設計の開発工数削減を実現しました。この数字は同社の中で注目を集めることになり「正直なところ、プレッシャーがあった」と、宮下氏は振り返ります。 トラック開発特有のプロセスを考慮した場合、データの保証と配置情報の管理がポイントになります。日野自動車がTeamcenter導入を決めた理由は、「最新データの一元管理」、「レイアウト情報の管理」、「大容量データをビューワで見られる」、「チーム設計の支援」、「流用設計のデータ管理」、「2種類のCADのデータ管理」でした。 「配置情報を管理するためにもルールを決めなければ、同じ位置に配置ができません。部品ごとに配置情報を決めて、車一台分の情報を管理してアセンブリしたい。」と宮下氏は話します。このようなニーズに対して同社では、装置に関するデータはひとつだけ存在しコピーは作らない、配置情報を構成情報として管理する、という方法で実現しています。 また、「色々な車型があるので、変更があった場合に、他の車型も成立しているかを横並びで評価したい。」というニーズもありました。この場合、CADデータを使用すると非常に重くなるため、ビューワを活用して、軽いデータで確認することにしました。さらにTeamcenter導入と同じ時期にJT™ データフォーマットを採用し、軽量データでのデザインレビュー、デジタルモックアップを実現しました。 Teamcenter導入後は、35車型開発時間の短縮を達成しています。ほとんどの設計者から「データ登録が楽になった」、「データの上書きがなくなった」、「最新のデータが集められるようになった」と言った声が聞かれるようになり、データの保証の効果が表れています。最新データの収集作業では、以前は10車型を2人がかりで1週間かけて集めていましたが、導入後は1人の設計者が1週間で60車型集められるようになった(12倍の効率改善)例も出ています。 時間短縮に加えて、開発プロジェクトが進む過程で、様々な課題が発生し、それらを解決しながらプロジェクトが進みます。開発プロジェクトを4つのステージに分けて見た場合、以前は立ち上げ直前の第4ステージまで課題が残っていたケースも少なくありませんでした。しかしTeamcenter導入後は第3ステージの終わりころには、ほぼ課題が解決できるようになりました。この第3ステージは実際のもの作りで使用する型などが入ってくる段階です。そのため、この段階以降での変更はコストを大きく増加させる要因にもなります。設計品質の向上と全体のコスト削減の効果も生まれています。 最近、同社ではHINO 500 Rangerという新型車を発売しました。この車はプラットフォームを変更したサードジェネレーションと呼ばれる車種で、最初の生産立ち上げがインドネシアの工場でした。このプロジェクトに関して、「Teamcenterがなかったら、この立ち上げを乗り切れなかったのではないか。」と宮下氏は話します。 このプロジェクトは日本で開発して最初に海外の工場で生産を立ち上げる初めてのケースであり、また通常より約20%短い期間という非常にタイトなスケジュールでした。従来の方法では間に合わないのではと危ぶまれていましたが、Teamcenterで構築したシステムを活用することで無事にプロジェクトを完了しています。

設計のやり方を工夫

Teamcenter導入ではカスタマイズも行われましたが、同社では設計の仕事のやり方を変更することにも取り組んでいます。 「カスタマイズは結構あります。これを維持するには費用が掛かるので、出来れば標準仕様にしたい。標準仕様でやるためには、設計の仕事のやり方を多少変えていかなければならない。」と宮下氏は話します。 カスタマイズで対応するか、設計の仕事を変更するかについて、設計者と相談しながら進めています。標準仕様に合わせた例としては、CATIAからTeamcenterへの登録時にデータの設定をきちんと行う。一つの図面に複数の図番が入っている多品図は、更新すると構成が壊れるので、設計部門で標準化を行うなどがあります。 また、設計変更の検討はCADではなくJTを使ったビューイングで行うようになりました。通常、設計変更する部分は細かな部分です。大きなデータをCADで開くのではなくJTを使ってビューワで開き、変更箇所を確認し、その部分だけをCAD開くようにしています。 「ソフトウェア、システムの改善もありますが、仕事のやり方を工夫することの両面で改善をしている。仕事のやり方の改善により相乗効果を生んでいる。」と宮下氏は話します。 現在、CATIAとTeamcenterの連携が上手くできていることからも、宮下氏は「CATIA、Teamcenterの組合せの仲間を増やしたい。」と話します。

Teamcenterとともに次のステップへ

設計データの一元管理により効果を上げているのは、設計部門だけではありません。最近ではカタログ制作の場面でもCADデータを活用することで効果を生んでいます。従来は実車を使った撮影でしたが、CADデータからCGを作成することで、これまではできなかった表現も可能になった他、10台分の車のカタログを制作した場合、約1億円のコスト削減効果が生まれています。 現在、生産技術部門ではTeamcenter Manufacturingを導入していますが、デジタルモックアップだけで使用しており、効果はまだそれほど大きなものにはなっていません。 「できればTeamcenter Manufacturingを使って、型データや作業マニュアル、工場レイアウトの管理を行うことで、設計以上に効果が得られると期待している。」と宮下氏は話します。 そのほかにもコスト管理など様々なデータがあり、色々なシステムが存在しています。それらを連携していき、「最終的には営業部門が仕様を入力すると、こういう車で、これくらいの金額で出来て、それが生産ラインに渡って製造される。」といった同社のプロダクトライサイクル全般にわたって活用されるシステムへの発展を目指しています。

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