製品開発から生産に至るプロセスを最適化するデジタル・マニュファクチャリングが大きな注目を集めています。
この潮流の中で、シーメンスPLMソフトウェアは、先進的なデジタル・マニュファクチャリングを実現するソリューションとしてTecnomatixを提供しています。本稿では、デジタル・マニュファクチャリングの概念やTecnomatixを活用することのメリット、その将来性について解説します。
シーメンスPLMソフトウェア日本法人
技術本部 ビジネスコンサルティング部
マネージャー 五島 直

プロダクトデザイン、プロセス・プラントデザイン、オートメーションデザイン、プロダクションの一連の流れを包括的に管理するPLM(製品ライフサイクル管理)の中で、プロセス・プラントデザインの領域を最適化するデジタル・マニュファクチャリングが注目を集めています。これは、製品開発から生産までのプロセスである生産設計・工程設計・作業時間設計・工程表作成・設備設計・生産段取りなどを最適化する技術の総称です。その役割は以下のとおりです。

「シーメンスのPLM長期的戦略」
このデジタル・マニュファクチャリングを実現するソリューションとして、シーメンスPLMソフトウェアはTecnomatixを提供しています。これらのソリューション群は、エンジニアリング活動と製品情報および製造ノウハウを結び付けるオープンなPLM基盤のTeamcenterと連携することで、製造プロセス全体でナレッジを共有できることが特長です。

「製品のライフサイクル全体を支援するソリューション群」
現在、日本のものづくりは転換期を迎えています。これまで日本の製造業は、紙や表計算ソフトを利用しながらベテラン技術者個人の勘や経験を頼りに製造プロセスの改善を積み重ねてきました。しかしながら、このような方法では、せっかく製造現場で得られたモノづくりのノウハウを関係者間で共有することが困難になります。また、ベテランが退職してしまうとノウハウが失われてしまいます。
国際競争が激化する中で、新たな市場や低コストに生産できる海外拠点を求めて製造業のグローバル化が加速しています。たとえば、国内の工場を海外に移転する場合、複数の工程や作業を処理する多能工を得意とする日本の工場文化を、単一の工程のみを処理する単能工が主流の国の工場でそのまま適用できるとは限りません。そのため、新工場を移転先の国の工場文化やビジネス習慣に適合させることが求められるケースもあるのです。
2007年問題により団塊世代が一斉に退職したものの、ベテランから若手への技術移転や、暗黙知の形式知化は進んでいません。改善を積み重ねてきた日本の製造現場には、すぐれたモノづくりのノウハウが埋もれたままになっているのです。このような背景から、モノづくりのプロセスと製造ノウハウをデジタル化して、いつでもどこでも活用できるようにするデジタル・マニュファクチャリングの導入が、グローバル化する製造業にとって不可欠になっているわけです。
物事をシステマティックに体系化しようとする傾向が強い欧米に比べ、これまでの日本ではモノづくりが製造現場の熟練技術者に支えられてきたために、製造ノウハウを知的財産として一元管理しようとする志向が希薄でした。ところが最近になって、消費者の嗜好や市場環境の変化のスピードが速くなり、それに伴う急速な生産変動に対して、組織的な対応能力が求められるようになってきました。そこで、製品ライフサイクルを通じて、すべての製品情報を関係者間でスムーズに共有し、迅速かつ確実に生産ラインを準備する仕組みの確立と、一連のエンジニアリング活動の成果を製造ノウハウとして自動的に蓄積し、将来の製品開発や工程設計などに再利用していく製造ナレッジのフロントローディングを実現したいと考える企業が増えています。

「Tecnomatixによるデジタル・マニュファクチャリング環境」
今後も、顧客の需要や経済環境の変化により生産変動が頻発し、競合他社による新製品の投入もあいまって製品ライフサイクルはますます短期化するでしょう。これまでは、新製品投入のたびに生産ラインを新規に設計し、製造開始後に徐々に製造プロセスに改善を加えてきました。その結果、開発や生産技術部門は“現在の生産ラインの状況”を把握することが困難になり、製品の仕様変更や新製品投入、生産集約などに伴う生産移管のたびに行う生産ラインの段取り替えの計画に多くの時間を割いていました。特に、最近のように多品種少量生産や製品の仕様を少しずつ変えながら製品寿命をのばすマス・カスタマイゼーションの要求が高まるにつれ、頻繁な生産段取り替え対応が課題になっています。そのため、Tecnomatixを利用して既存の生産ラインを常にモニタリングしながら、変更すべき部分を事前に検証することで、ライン変更に柔軟に対応できる体制を整備する価値は極めて大きいと言えるでしょう。

「工程計画/検証ソリューションの製品構成」
Tecnomatixを利用することのメリットはこれだけではありません。バーチャルとリアルを融合する“仮想工場”の実現です。これまでは生産体制を確立するまでに、リアルな工場で新製品の試作品を生産ラインに流し、生産ラインの適正を検証する必要がありました。ところが、Tecnomatixを活用すれば、実際の工場を投影した仮想工場で工程設計や生産ライン設計を行うことが可能です。これは、仮想工場でバーチャルな製品を生産ラインに流し、プロセスの適正を検証した後、リアルな工場ですぐに生産ラインを切り替えて生産を開始できることを意味しています。

「デジタルファクトリー~生産設備と向上の3次元モデルによるシミュレーション」
また、設備を実際に据え付ける前の工程計画の段階からバーチャル工場で安全性を確認したり、そこで働く作業者の腰や腕にかかる負荷を定量化し、疲労強度が高い部位を特定したりすることもできます。さらに、製造プロセスにかかわる作業者が移動する時間の算出や、体格や性別によって異なる同一作業にかかる運動負荷量の評価、人手が必要な作業で手先が作業者の視野に入ることなどを事前に検証することで、働きやすさを定量化することも可能です。特に欧米では、作業の疲労強度に関する国際的な指標を満たした生産ラインを設計する必要があります。
さらに、これまで設備設置後でなければ確認や調整が困難だった電気制御と設備動作のミスマッチをコンピュータ上で検出・修正するバーチャルコミッショニングが近い将来可能になるでしょう。デジタルで構築したロボットやPLC(プログラマブル・コントローラ)、およびPLC制御盤が正しく動作するかを事前に検証し、そのまま工場に適用できるので、生産ラインをほとんど止めることなく新しい製品を投入する際にラインコントロールの切り替えを行うことができます。

「デジタルファクトリー~近い将来の自動化ライン設計・検証方法」

「バーチャルコミッショニングによる生産ライン立ち上げ期間の短縮効果」
顧客の品質に対する要求が高まる中、製品のばらつきを抑えながら組み立てコストを抑制する最適な公差設計に注力する企業は増えています。ところが、不具合があったときの原因解明やその対応は不十分だと言わざるを得ません。確かに、日々生産される製品の検査データは、製造現場でモニタリングされ、不良品の手直しに活用されています。ただし、検査データが製品開発や工程設計段階までフィードバックされ、製品開発や工程設計の源流で品質の作りこみに活用できているケースは少ないのが現状なのです。
こうした品質情報管理を徹底するには、すべての製品と、作業者、機械設備、材料、製造条件のあらゆる情報をひもづけながら包括的に管理するトレーサビリティの構築がポイントになります。シーメンスPLMソフトウェアのデジタル・マニファクチャリングソリューションでは、製品、工程、設備、作業者といった、製造情報をBOP(Bill of Process)として相互に関連づけて管理します。このソリューションでは、不具合の原因を追跡するだけでなく、製品開発や工程設計に品質達成要因を織り込んでいく完全なるトレーサビリティを実現することが視野に入っています。

「デジタル・マニュファクチャリングと生産ラインの連携によるトレーサビリティ構築コンセプト」

「バーチャルとリアルの融合」
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